東京への女性流入

2018年の合計特殊出生率は、3年連続の低下となり、少子化は止まりません。晩婚や非婚化が原因とされていますが、都市にばかり日本の女性が集まる女性の都市化も問題となっています。2018年の東京都への女性の転入超過数は4万8千人です。男性の転入超は3万4千人で、年々その差は開きつつあります。東京の出生率は低いもままで、働きやすい都市に女性が集中し、少子化に拍車をかけています。
東京都への女性の転入超過数が男性を上回ったのは、近年では2009年からです。その時点では転入超過の男女差は約3,500人でしたが、2018年には約1万4千人にまで広がっています。地方から来た女性が、東京にとどまる傾向が強まっています。全国で2018年に女性が転入超過となったのは、東京のほか、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、愛知県です。これら転入超過数を合算し、その内訳をみると、東京が56%、神奈川が13%、埼玉が11%、千葉が10%と、9割を首都圏が占めています。
全国の合計特殊出生率が1.42なのに対し、東京は1.20で全国最低です。高い家賃や長い通勤時間、薄い地縁など、決して子育てしやすい環境とはいえない地域に女性が集まっています。国立社会保障・人口問題研究所の人口移動調査によれば、地方から大都市に移動した女性は、大都市で生まれて大都市に住み続ける女性より、初婚後に産む子どもの数が少数です。育児をサポートしてくれる親が近くにいないことが出生率を下げています。
出生率を上げるためには、首都圏で子育てをしやすくすることと、若い女性が地方でも定着できる環境を整備することです。地方では男女平等に働ける場所が少ない状況にあります。結婚や出産でパートなどへの職種変更を迫られないような職場づくりが必要です。日本の子どもを増やすには、都市の少子化対策が急務です。

(2019年6月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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