性別適合手術の保険適用

昨年4月より、性同一性障害(GID)の性別適合手術に公的医療保険の適用が始まりました。しかし、この1年間で、生殖器の摘出や形成の適合手術に保険が適用されたケースが4件のみでした。この間、保険適用が認められる認定病院で実施された手術は約40件で、適用は1割程度にとどまっています。大半の患者は、手術前に保険外の自由診療であるホルモン療法を受ける必要がありますが、保険診療と自由診療を併用すると、混合診療と扱われ保険適用外となってしまい、全額を自己負担しなければならなくなります。生殖器の摘出や形成の費用は70万~200万円ほどですが、保険適用されれば原則3割負担で済みます。
GID治療の指針では、手術前にホルモン療法を実施するのが基本です。ホルモン剤を投与して望む性に近い状態にし、心身に問題がないかどうかを診ます。精巣や卵巣の摘出後は、性ホルモンの分泌が止まって心身に大きな変化が生じるため、ホルモン剤を継続的に使用しますが、その副作用の有無を事前に調べる必要もあります。そのため、ホルモン療法にも保険を認め、多くの人が手術を受けられるようにすべきです。

(2019年6月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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