わが国の再生医療に憶う

国は、再生医療安全性確保法と医薬品医療機器法に基づき、適切な再生医療の実施を目指しています。前者の法律は、細胞を使う再生医療の安全性確保などを目的とし、細胞や投与法などに応じて規制します。様々な臓器の細胞に分化できるiPS細胞を使う場合は、厚生労働大臣が認定する病院内などの委員会に加え、厚生労働省の専門部会でも審議され、議論の内容は適宜明らかにされます。しかし、ヒトの骨髄や脂肪などから採取した体性幹細胞や体細胞を用いる場合は、厚生労働省部会での審議が不要で、院内などの委員会の承認後は地方厚生局に届けるだけで済みます。
後者の医薬品医療機器法では、再生医療の機器や薬剤といった製品が審査されます。安全性が確認され、少数の患者の臨床試験で有効性が推定されれば、国から条件や期限付きで承認される特例もあります。しかし、論文発表無しに、効果の不明な治療薬や機器が出回る懸念があります。
わが国は、他国に先駆け再生医療を患者に届ける制度を整備しました。再生医療学会による臨床研究や治療効果のデータベース化も、2年前から始まりました。患者の体内で細胞や組織が働く再生医療のメカニズムの解明はまだ十分ではなく、研究としては文字通り始まったばかりです。これまで様々な臨床研究が実施されていますが、安全性の検証も含めて、臨床上有益であるといった明らかなエビデンスは未だ報告されていません。期待が大きければ大きいほど、慎重な対応が望まれます。

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