患者がストレスにさらされると、乳がんが悪化することが、細胞レベルで解明されました。マウスにヒトの乳がん組織を移植し、乳がん組織内の交感神経を刺激し続けました。60日後、刺激しないマウスと比較すると、がんの面積は2倍近く大きくなり、転移数も多くみられました。一方、遺伝子治療で交感神経の活性化を止めると、60日経ってもがんの大きさはほとんど変わらず、転移もみられませんでした。
(Nature Neuroscience 08 July 2019)
手術を受けた乳がん患者29人のがん組織を調べたところ、がん組織内の交感神経の密度が高い人は再発しやすいこともわかりました。これまでのがん治療は、手術や薬物治療が中心でしたが、がん組織内の局所の交感神経の活動を抑制する遺伝子治療が使えるようになれば、がん治療に神経医療という新たな選択肢が広がります。
(2019年7月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)