流産を繰り返す女性の妊娠率を上げるための手段として、受精卵の染色体を調べる着床前スクリーニングが欧米で実施されてきた。これまで用いられてきた検査法はFISH法であり、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)は、これによるスクリーニングは有効性がないとする見解をまとめた。最近になりアレイCGH法が開発され、全染色体を調べる精巧な診断法が用いられるようになってきている。慶應大でこのアレイCGH法を用いて、69個の受精卵を検証したところ、約7割に染色体異常を認めたことを報告してきた。流産の原因はこうした染色体異常によることが多く、受精卵をスクリーニングすることにより流産率を低下させることができると考えられる。この際、流産率は低下するが、妊娠率や出生率の増加は期待できないかもしれない。
日本産科婦人科学会は着床前スクリーニングに関する小委員会を立ち上げ、アレイCGHの医学的有用性を検証する予定である。命の選別というスクリーニングに伴う倫理的な課題はあるものの、医学的な検証が前提となるであろう。
(2014年4月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)