認知症の3分の2はアルツハイマー病が原因です。アルツハイマー型の治療薬は、原因と推定されているたんぱく質が脳内に蓄積しないようにして発症や進行を防ぐことを狙っています。しかし、日本では認知症薬として承認されている薬も、フランスは費用対効果の観点から公的保険の対象外とするなど、アルツハイマー型認知症の予防や治療効果に疑問が投げかけられています。
2017年に英医学誌ランセットに掲載された研究によれば、認知症の遺伝的な要因は7%に過ぎず、35%は予防できると指摘されています。英研究チームによると、最大の要因は聴力の低下で、耳が遠くなると9~17年後に認知症になる傾向がありました。中等教育(12~14歳)の未修了者もリスクが高く、教育を受けることで、認知機能が高まると同時に健康に気を配るようになると説明しています。WHOが初めて作成した認知症の予防ガイドラインでも、認知機能の低下や認知症のリスクを低下するため、運動と禁煙を強く推奨するとしています。
注目されているのが早期診断です。国立がん研究センターと国立長寿医療研究センターは、血液でがんの早期発見を目指して、マイクロRNAを測ることにより、アルツハイマー型、脳血管性などほとんどの認知症の発症を予測できることをみつけています。早期から対応できれば、生活習慣病が原因となる防げるはずの認知症を防ぐことができるかもしれません。
(2019年7月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)