株主総会で企業の女性活用に関する質問が増えています。今や、企業は株主や投資家に対し、業績や経営戦略に加え、女性活用の具体的な取り組みや進捗状況への説明責任が求められています。わが国においては、女性役員の数は少なく、女性登用が進んでいるとは思われません。女性取締役の起用で悩ましいのは、1人で複数の会社の社外取締役や社外監査役を兼ねる例が多いことです。経営に詳しい候補者の層が薄いうえ、生え抜きの女性役員は人数がさらに限られてしまいます。兼任批判を受けて女性社外取締役の増加が鈍化する中、人物本位で取締役会に女性を起用したいと考える企業は多くなっています。
日本でも企業統治改革の進展により取締役会は経営陣を監督し、大所高所の議論をする場に急速に変わりつつあります。多様性は、性別、国籍、年齢など多岐にわたります。高齢男性が多数派を占める取締役会を脱しないと大競争時代に取り残されてしまいます。上場企業では、女性登用の局面も変わってきています。これまでは部長や執行役員クラスに生え抜き社員を就けることが中心でした。2017年頃から有力子会社のトップに優秀な女性を任命する例が金融界を中心に増えています。こうした動きは今後、事業会社にも広がりそうです。女性であれば誰でも良いという話ではありません。本人のスキルや能力、他の取締役との専門性のバランスも考えながら、女性候補者を選定することが大切です。
(2019年7月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)