女性の労働力率を年齢階級別にグラフにすると、30代がへこみM字型を呈します。子育て期にいったん離職し、子育てが一段落した40代で働き始めるためです。欧州の主要国ではこうした傾向がみられず、30代女性の労働力率が80%前後でグラフにすると台形に近くなっています。M字カーブはこれまで日本で女性の労働参加が進んでいない象徴とされてきました。
女性の就業者数が初めて3000万人を突破しました。女性が出産や育児で仕事を辞め、30代を中心に就業率が下がるM字カーブが解消してきたことが主因です。しかし、非正規で働く女性が多く雇用の調整弁という側面は残ったままです。男女の不合理な待遇差の解消が課題になっています。
総務省が発表した2019年6月の労働力調査では、35~39歳女性の労働力率は76.7%となり、過去最高に近い水準となっています。1999年は30~34歳の労働力率が56.7%、35~39歳は61.5%でした。現状は30代の労働力率が大きく上昇し、欧州のような台形に近づいています。男女合わせた就業者は6747万人となり、前年同月比で60万人も増えましたが、増加分の9割近くが女性です。人口減少が進むなかで女性の労働参加は安定した経済成長に欠かせません。
しかし、課題もいくつかあります。その1つは非正規が多いことです。女性の雇用者のうちパートら非正規労働者が55%を占め、男性の2倍以上になります。企業にはいったん採用すると解雇しにくい正社員よりも、雇用期間を限定できる非正規で募集する傾向があります。もう1つの課題は、能力のある女性が活躍できる機会をいかに増やしていくかです。労働政策研究・研修機構によれば、日本の女性管理職比率は、2016年時点で12.9%に過ぎません。米国の43.8%、フランスの32.9%に遠く及びません。上場企業3,490社のうち女性役員がいない企業は60%を超えています。
女性が働きやすいように仕事と家庭を両立できる環境をつくり、性別や働き方にかかわらず能力や成果を適切に評価することが課題になります。さらに付加価値の高い仕事にシフトし、主要7カ国で長く最下位の労働生産性を高めていくことが、息の長い経済成長に必要不可欠な条件となります。
(2019年7月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)