PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、生死に関わるような危険など、強い恐怖体験がきっかけで発症します。その時の記憶が繰り返し思い出されて、恐怖を感じます。医師に体験を何度も話すことで症状を軽くする治療法が有効ですが、長い時間がかかり、負担も大きいものがあります。
東大の研究グループは、小さなマウスを、体が大きく周囲を威嚇するマウス(約40g)に1日10分間、10日連続で近づけて、恐怖体験を覚えさせました。小さなマウスはPTSDの状態になり、大きなマウスを避けるようになりましたが、認知症の治療薬メマンチンを週1回、4週間与えると、大きなマウスを恐れなくなり、近寄るようになりました。メマンチンによって、マウスの脳の記憶に関わる部分の神経の新生が促進され、恐怖の記憶を忘れることにつながったと考えられます。
(2019年8月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)