日本は、他国に比べて祝日や公休が多い半面、有給取得率は低くなっています。厚生労働省の調査では、2017年は前年比1.7ポイント上昇の51.1%です。エクスペディアの世界19カ国・地域を対象にした調査でも、2018年まで3年連続で最下位です。連続での休暇を義務付けたり、休暇を取った社員に報酬を出したりする企業も増えていますが、2020年までに取得率70%という政府目標との隔たりは大きなものがあります。
厚生労働省のリポートによると、休暇取得率が高い産業ほど離職率が低く、労働生産性は高い傾向があります。人手不足が休暇取得の壁になっている面もありますが、人材を呼び込んで定着させるためにも、休み方改革の重要性が増しています。有給休暇の取得義務化は、正社員だけでなく派遣などで働く人も対象になります。
社員が休みを取りやすくなる工夫を凝らす企業が増えています。ビジネスとレジャーを組み合わせたブリージャーは、10年前後から欧米で普及しています。出張に有給を付けたことがある人の割合は日本が2割で最も低く、米国では5割弱、インドでは8割強の人が出張に絡めて現地での観光などを楽しんでいます。
またリゾートワークと呼ばれる制度を導入する企業も増えています。リゾートワークは、仕事と休暇を両立するワーケーションと呼ばれる制度の一種です。有給は本来、個人の判断で取得できますが、周囲に気兼ねして十分に取らない人も少なくありません。社内の制度にすることで、社員を休暇取得に積極的に誘導する仕組みです。
(2019年8月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)