新生児の難聴検査

先天性の難聴の子は千人に1人の割合でいます。多くの病院や産院では、生後2日ごろから退院までの間に新生児聴覚スクリーニング検査と呼ばれる検査をして、難聴の可能性があるかどうかを調べています。寝ている赤ちゃんに、ささやき声くらいの音量の音を聞かせて、脳波を調べる方法が主流です。使う機材にもよりますが、早ければ数分で終わります。海外では検査を義務化し、保険で費用がまかなわれる国もあります。しかし、日本では義務ではなく保険も使えないため、保護者が5千円程度を負担して受けさせるかを決めます。2016年度の実施率は87.6%で、機器がなく、検査態勢が整っていない施設もあります。経済的な理由で検査を受けられない子が出ないよう、検査費の全額や一部を補助する自治体もあります。
早期の検査が必要なのは、脳が生後数カ月で急速に発達するからです。耳からの情報がなかったり、極端に少なかったりすることは、言葉の発達の遅れにつながります。米国では、2000年に生後1カ月以内に初期検査、3カ月までに精密検査をして、難聴が分かれば6カ月までに早期支援が開始されています。生まれつきの難聴は少なくありませんが、早く介入すれば克服できる可能性が高いことも分かってきています。全ての赤ちゃんが検査を受けられ、早期にケアする環境を国内でも整えることが大切です。精密検査で難聴と診断された場合、軽度なら補聴器をつけます。重度なら人工内耳の手術をするなどの方法があります。

(2019年8月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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