予防医療とは、病気の発症を未然に防ぐ取り組みで、体重や食生活を適切に管理して生活習慣病を防ぐことが目的です。感染症を予防するためのワクチンの接種や、うつ病など心の病の兆候を早期に発見し、重症化を避けるのも含まれます。いずれも発症後に治療を始めるよりも医療費を抑えられ、仮に発症しても治療期間が短くなる場合が多くなります。
糖尿病患者の年間医療費は、重症化が進むに従って急増します。合併症がない場合は年5万円程度ですが、中度の腎不全になると同50万円に達します。透析やインスリン注射などが必要になるためです。調剤・歯科を除く医療費は30兆円超で、このうち3分の1程度を生活習慣病関連が占めています。政府は、医療や年金など社会保障制度の全体像を見渡した改革を再始動し、糖尿病などの生活習慣病の早期治療などに力を入れることにしています。予防医療に積極的に取り組む企業を補助金などで支援し、社員の負担を軽減する案などを検討することにしています。
(2019年9月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)