生殖医療を考える―Ⅳ

子どもの法的地位保全
生まれてくる子どもの保護ということを考えると、両親の関係の安全性は重要な要因であり、事実婚カップルは安定性に欠ける傾向にあるとの指摘もある。しかし子どもの健康な発育にとって、必要な安定した社会環境や成育環境を保障できるか否かは、両親が法律婚か事実婚かで決定されるものではない。そのためカップル間での生殖補助医療については、日本産科婦人科学会の見解でも示すように、婚姻を問わず挙児を希望する夫婦としている。しかしながら、子どもに対する法的権利義務に関しては、現在のところ事実婚には難点があることも事実である。そのため、第三者を介する生殖補助医療においては、子どもの法的地位が不安定になることもあり、法律婚のカップルに限定されることが望ましいと考えられる。これら医療においては生まれた子どもの法的地位保全が重要な問題であり、親子関係を含めた新たな社会的状況を考慮しなければならない。
子どもは医療行為がなされる時点で現存せず、問題が顕在化するときの社会一般の状況や子の家庭環境などは全く予想することができないため、厳密な意味でのリスク評価は困難である。考えうるあらゆる事態を想定した慎重な議論を重ね、子の福祉を最優先するような法益を考えるべきである。

(生殖医療の必須知識2020)
(吉村 やすのり)

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