現在、企業や官公庁には、一定割合以上の障害者の雇用が義務付けられています。身体と知的障害に加えて精神障害のある人がその対象になったのは、障害者雇用促進法が改正された2018年4月からです。企業が雇用しなければならない障害者の割合が、2.0%から2.2%に引き上げられたこともあり、精神障害者の採用は急増しています。2018年6月時点で、従業員約50人以上の企業で働く人は、前年比35%増の6万7,000人に上っています。
しかし、働く障害者全体の約53万5,000人の8分の1でしかなく、今後雇用を増やしていくには、職場への定着率を高めていく必要があります。精神障害者は採用から1年以内に51%が辞めており、身体障害者の39%や知的障害者の32%より離職しがちです。精神疾患は外見では分かりづらく、偏見も根強いため、就職時に会社側に障害のことを十分に伝えない人も少なくありません。厚生労働省は、今秋にも一人一人の障害特性などを企業や支援関係者で共有しやすくする就労パスポートを発行する予定です。得意なことや苦手なこと、働くのにどんな配慮が必要かなどを事業主側に把握してもらうことで、採用時のミスマッチを防ぐ狙いがあります。
(2019年9月11日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)