企業の開発研究費とは、新しい製品やサービスの創出、製造コストの削減や生産効率の改善などを目的として企業が研究開発に投じる資金のことをいいます。経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、日本全体の研究開発費の約8割を占め、大学や公的機関に比べて比率が大きくなっています。大学の研究が新しい科学的な原理の発見など基礎研究を重視するのに対し、企業の研究開発は製品化などを見据えた応用研究や開発研究が中心となります。人工知能(AI)など新しい発想の技術が続々と登場する中、近年は企業が大学など連携して研究開発を進めるオープンイノベーションの動きも増えつつあります。
文部科学省技術・学術政策研究所の科学技術指標によれば、日本の企業部門の研究開発費の86.7%を製造業が占めています。ものづくりを主体とする中国、韓国も同様の傾向で、製造業の比率は約9割に上っています。一方、米国は製造業が7割弱にとどまり、情報通信業などの非製造業が3割を超しています。日本がIT分野のイノベーション創出力や競争力を高めるうえでは、非製造業の研究開発力の強化も必要になります。
(2019年9月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)