大腸憩室出血

大腸憩室出血は、痛みなど前兆がなく、中高年に多く発生する病気です。大腸の粘膜が袋状に飛び出した憩室が、年齢を重ねるにつれて数が増えていき、出血につながります。残念ながら根治法はなく、再発する可能性も高くなっています。ただ食生活の改善で発病のリスクを抑えられるほか、排便に注意を払うことで重症化を防げます。ほとんどの憩室の大きさは直径2~3㎜から1㎝程度です。1人にできる数は10~30個程度、さらに多い場合もあります。普段は無症状ですが、憩室ができた粘膜は薄くなり、傷が生じやすくなります。便の詰まりなどがきっかけで、粘膜の下の血管まで傷がつくと憩室出血が起きます。



治療は、まず内視鏡で検査し、出血している場所を探し、血管を小さなクリップで挟んで止血する方法が一般的です。場所が分かるのは患者の2割程度に過ぎません。それ以外の約8割は場所が特定できないため、自然に止血するのを待つことになります。どうしても止血できない場合は開腹して腸を切除する必要がありますが、ここまで重症化するケースは少ないとされています。
高齢化が進み、大腸憩室出血などの大腸憩室症の患者数は急増しています。厚生労働省の患者調査によれば、2005年は7千人でしたが、2017年には1万6千人に増えています。大腸憩室症には、憩室出血のほかに憩室炎が含まれます。憩室の炎症で腹部に強い痛みや熱が出るのが特徴で、出血は主症状ではありません。点滴などで対処することが多くなります。ただ、大腸憩室炎は腸に穴があいたり、膿が発生したりすると腹膜炎や腸閉塞が起きることがあります。重篤化すると患部の腸を切除し縫い合わせる大掛かりな手術が必要になります。

 

(2019年9月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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