記録的な不漁は国内でも近年、起きています。温暖化で海水温が上昇していることが一因とされています。今世紀末には、海面温度が最大で約4度上昇する可能性が指摘されており、さらに深刻な影響が表れる可能性があります。海水温だけでなく、海洋の酸性化も悪影響を与えます。人間活動から排出される二酸化炭素(CO2)の約2~3割は海洋に吸収され、海洋が酸性化します。プランクトンの種類や量が変化するなどして、海洋生態系が悪化するとされています。
今世紀末、1986年~2005年と比べて海洋動物は最大20.9%減、漁獲量は最大24.1%減の恐れがあります。漁業資源に頼っている西アフリカや北極圏小さい島嶼国では、栄養不足のリスクを高めることになります。温暖化対策が十分に進まなかった場合、2100年の平均海水面が1986~2005年に比べ、最大で1.1メートル上昇すると予測されています。海に囲まれ、海の恵みとともに生きる日本にとって、海洋環境の悪化は深刻な問題です。CO2などの温室効果ガスの削減とともに、変化する環境への対応も欠かせません。
(2019年10月2日 読売新聞)
(吉村 やすのり)