日本の出生数が急減しています。1~7月は前年同期に比べて5.9%減り、30年ぶりの減少ペースとなっています。団塊ジュニア世代が40代後半になり、出産期の女性が減ったことが大きく関与しています。2016年に100万人を下回ってからわずか3年で、2019年は90万人を割る可能性が高くなっています。想定を超える少子化は、社会保障制度や経済成長に多大な影響を与えます。厚生労働省の人口動態統計によれば、1~7月の出生数は前年同期比5.9%減の51万8,590人でした。減少は4年連続ですが、2019年は月次でも3月に7.1%減となるなど、大きな落ち込みが続いています。2018年1~7月は同2.0%減でした。
団塊ジュニアである1971~74年生まれのこの世代は、2019年には全て45歳以上になります。2018年10月1日時点の人口推計によれば、日本人の女性は40歳代の907万人に対し、30歳代は23%少ない696万人、20歳代は36%少ない578万人です。出産期の女性が大きく減っています。
1人の女性が生涯に生む子どもの数にあたる合計特殊出生率は、2018年に1.42と、3年続けて下がっています。結婚して子どもを産みたいと考える人の希望がかなった場合の値は1.8で、理想と現実の差は大きなものがあります。政府はこの希望出生率1.8を2025年度に実現することを目標に、保育所の整備や育児休業の推進などに取り組んできています。出生率が上がらなければ、出生減に歯止めがかかりません。2019年は7月までの減少ペースが続けば、90万人を割り込む公算が大きくなります。外国人を含んでも90万人に届かない可能性もあります。
少子化は、現役世代が高齢者を支える形の医療や年金、介護の社会保障の枠組みを根底から覆すことになります。特に公的年金は、現役世代が払う保険料で支えており、担い手が減れば年金の支給額に響きます。高齢者増で膨らむ医療費も少ない現役世代にしわ寄せがいきます。少子化が進めば、人手不足は一段と深刻になります。若い世代を中心に労働力の減少は、経済の潜在成長率も低下してしまいます。
出生数を回復するためには、若い女性が出産しやすい環境づくりが課題となります。日本の出生率を年代別にみると30歳代後半については、1.7~1.9台と高いフランスやスウェーデンとも差はなく、各国を大きく下回るのは20歳代です。正社員の終身雇用が多い日本の労働慣行では、出産や育児で休職するとキャリアが積み上がらず、仕事上不利になりやすい状況にあります。夫による子育ての参加拡大を認める企業文化の定着を含め、若い女性の仕事と育児が両立できるような職場環境を考えることが大切です。
(2019年10月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)