ノーベル化学賞が、旭化成名誉フェローの吉野彰さんに贈られることが決まりました。化学賞は2010年の鈴木章さん、根岸英一さんのダブル受賞から9年ぶりの獲得です。この10年間は、ほぼ毎年のように受賞者を出しています。昨年もがんの免疫療法に関わる研究で、本庶佑さんが医学・生理学賞に輝いたばかりです。
ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンの実業家、アルフレッド・ノーベルの遺言によって1901年に創設されました。物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の6賞でそれぞれ毎年最大3人まで選ばれます。日本人はこれまで経済学賞のみ受賞していません。これまでに27人が受賞しています。
2018年までの自然科学分野3賞の日本の受賞者は、1949年の湯川秀樹氏(物理学賞)に始まり、2018年の本庶佑氏(生理学・医学賞)を含めると23人です。文部科学省のまとめでは、2018年までの国別受賞者は米国が断トツで265人です。次点は英国の80人、ドイツが69人で続いています。日本は5位です。ノーベル財団によると、文学や平和、経済学を含めると1901年から2018年までに935の個人と団体が受賞しています。
近年、日本の若手研究者を取り巻く環境は厳しいものがあります。大学に残っても任期が限られ、腰を落ち着けて研究することが難しくなっています。このため、博士課程を目指す若者も減少傾向にあり、研究環境を整備することが欠かせません。今の受賞が、若い研究者の励みになり、若手が挑戦を重ね、将来のノーベル賞につながる研究が生まれることが大いに期待されます。
(2019年10月10日 産経新聞)
(吉村 やすのり)