京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長は、再生医療に使うiPS細胞を備蓄するストック事業について、ねらい通りに遺伝子を変えるゲノム編集の技術を使い拒絶反応が起きにくいiPS細胞を作る方針を発表しています。様々な細胞に分化できるiPS細胞は、再生医療への活用が期待されていますが、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型(HLA型)を持つ人の血液を元にiPS細胞を作って備蓄する事業を進めてきました。これまでに作った4種類の細胞で日本人の約4割をカバーできます。しかし、9割まで高めるには珍しい型を含めて140種類をそろえる必要があり、費用対効果が低いことが課題でした。
拒絶反応を引き起こす免疫細胞にとって目印になる物質HLAの一部を、ゲノム編集技術で壊して拒絶反応が起こりにくくします。あと5~6種類を追加すれば、残りの日本人6割をカバーできるとされています。ゲノム編集した細胞の安全性について慎重に検討し、2020年頃から研究機関や企業に提供する予定です。この10種類は日本人だけでなく、世界の大半の人もカバーできると考えられています。
(2019年10月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)