消防白書によれば、全国の救急車の出動件数は、2004年に初めて500万件を超え、2018年は過去最多の660万5,166件に達しています。約6割は65歳以上の高齢者で、入院を必要としない軽症患者がほぼ半数を占めています。急増の背景には、症状が安定した患者の転院など緊急を要しない搬送や、比較的軽症の患者の利用が増えている事情があります。人口の高齢化で救急需要は今後さらに増大すると思われます。
大幅な増加に対応できないため、救急車の現場到着は1997年の6.1分から2017年は8.6分、病院への収容時間も1997年の26.0分から2017年は39.3分に延びています。一刻を争う重症患者への対応が遅れると、救命率の低下を招く恐れがあります。軽症で救急車の必要がない患者の搬送を少なくするため、総務省消防庁は♯7119に電話すれば、医師や看護師、相談員らが緊急性や応急手当の方法をアドバイスする救急安心センター事業の普及を推進しています。
(2019年10月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)