夫婦の3組に1組が離婚する時代です。親が離婚した子は20万人を超え、1950年の約2.7倍に増えています。母親が引き取ることが多くなっていますが、母子家庭の7割超は養育費を受け取れず、立て替え払いを検討する自治体も出てきています。一方、父親の約半数は離別した子と交流したことがなく、面会を求める訴訟が相次いでいます。
養育費を受け取る母子家庭は、厚生労働省の2016年の調査によれば、わずか24%に過ぎません。OECDによると、子がいる大人が1人の現役世帯の相対的貧困率は、先進国で最悪水準です。子どもの権利条約は、扶養料の確保策をとるよう締約国に求め、欧米や韓国は不払いへの罰則や立て替え払いで積極介入しています。離婚相手と関わりたくない、相手からDVを受けていたなど、不払いには多様な事情もあり、元夫婦だけで解決するのは限界があります。子どもの貧困対策は未来への投資であり、国を挙げて推進していくことが大切です。
子の自己肯定感を育てるためにも、離婚後の面会交流は重要です。しかし、日本では、離婚後も両親と子どもが交流を続けるケースは少なくなっています。日本は、離婚すると父母の片方しか親権を持てない単独親権を採用しており、母親が子を引き取るケースが約9割と圧倒的です。そのため、夫婦の離婚が親子の絶縁につながっています。
民法では離婚時に親子の面会交流や養育費を取り決めると定めていますが、強制力はありません。厚生労働省の2016年の調査では、母子家庭の46%は、父と子の面会交流の経験がありません。一方、欧米では離婚後も子どもが双方の親から養育を受けられるよう、共同親権が主流となっています。離婚で子どもの親権をめぐり争いになるのを防ぎ、子どもの人格を尊重するためにも、養育費や面会交流の取り決めを義務化し、問題なければ共同親権も選べる制度が必要であると思われます。
(2019年12月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)