厚生労働省の専門医委員会は、ゲノム編集技術を人間の受精卵に使い、子宮に戻して着床させる臨床利用について、禁止するための法規制を含めた制度をつくるべきだとする報告をまとめました。ゲノム編集した人間の受精卵を子宮に戻すことについては研究を禁止する指針はありますが、医療行為について規制はありませんでした。政府の生命倫理専門調査会は、ゲノム編集した受精卵を子宮に戻す臨床利用について、法規制を含めた制度のあり方を検討するよう求めていました。海外では受精卵への技術利用について、法律などで規制しています。仏、独、英では、遺伝子を改変した受精卵の臨床利用は法律で禁止しています。米国は臨床試験の承認審査を禁じています。
専門医委員会の報告では、ゲノム編集技術で受精卵の遺伝子を変えて子宮に戻すことは、安全性が担保されておらず、世代を超えて影響が出る可能性があります。実施できないようにするため、強い規制を伴う制度が必要とされました。しかし、遺伝性の病気の治療法の開発のために子宮に戻さずに行う基礎的な研究の発展は妨げることはできません。臨床応用が認められる可能性は、技術の進歩や国民の理解を踏まえながら、継続的に検討していくこととしています。
(2019年12月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)