ゲノム編集は、生物の遺伝情報を、狙い通りに書き換えられる画期的な遺伝子操作の技術です。最もよく使われているゲノム編集技術は、海外で開発されたCRISPR/Cas9です。しかし産業で使おうとすると、巨額の特許使用料がかかる可能性があります。
東京大や大阪大などの研究チームが、ゲノム編集の新しい技術を開発し、筋肉の力が衰える難病患者の細胞で、原因遺伝子を修復することに成功しました。従来のゲノム編集技術に使うたんぱく質に似たCas3というたんぱく質に注目しました。
筋肉の難病であるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者から作ったiPS細胞で実験しています。この病気は遺伝子の変異で、たんぱく質の一種ができなくなり、筋力が落ちます。原因遺伝子にCas3を使うと、変異部分がごそっと削られ、不完全ではありますが、たんぱく質ができるようになりました。Cas3の適切な応用法が見つかれば、Cas9に置き換わる国産技術として、産業に利用される可能性があります。ゲノム編集技術は海外が先行していますが、国産の技術によって国内の企業が利用しやすくなります。
(2019年12月7日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)