医療用医薬品とは、医療機関での医師の診断に基づき、患者の体質や症状に応じて処方される医薬品を指します。薬価の1~3割の自己負担額を除いた分が、医療保険で原則償還されます。有効性が高い半面、副作用が出ることもあり、医師の処方がなくても薬局などで購入でき効き目が穏やかな、一般用医薬品(市販薬)とは明確に区別されています。
日本の医療用医薬品の2018年の市場規模は、売上金額ベースで約10兆3,375億円で、ピーク時の2016年から2年連続で減少しています。高齢化で社会保障費が増大するなか、政府が医療費の伸びを薬剤費の引き下げで抑える政策の影響があります。
2018年6月からは、一部の戦略特区で、インターネットを通じて医療用医薬品を受け取ることができる仕組みが解禁となっています。しかし、先行実施した国家戦略特区の利用者は、開始から1年強で16人どまりで、登録した薬局数29店より少ない状況です。要件が煩雑で、制度の浸透は医療費抑制につながると期待されていますが、課題は山積しています。
(2019年12月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)