次世代電池として期待されているのが、全固体電池です。指先に乗るほど小さい製品が量産化の段階に入り、車載向けの大型電池でもトヨタ自動車やパナソニックなどが2020年代前半の実用化を狙っています。
全固体電池は、リチウムイオン電池の一種で、リチウムイオンの通り道になる電解液の代わりに固体の電解質を使います。可燃性の電解液を使わないため、安全性が高く、長期間使用しても劣化しにくい特徴があります。小型化もしやすく、例えばスマートフォン向けでは現行の電池の半分以下のサイズにすることも可能とされています。全固体電池の最大市場になると期待される分野が車載向けです。全固体電池は、既存のリチウムイオン電池の性能を上回るとされ、電気自動車(EV)の欠点である航続飛距離を伸ばせる見込みです。安全性や耐久性も高く、急速充電にも対応できるとされています。
現行のリチウムイオン電池では、中韓勢にシェアを奪われつつあります。一方、全固体電池では日本の存在感は大きく、2014~2018年の全固体電池の国別の累計特許出願数5,629件のうち、日本は34%を占めて首位でした。企業別でも健闘しています。全固体電池の発明数では、日本企業が上位を占めています。首位がトヨタで、出光興産やパナソニック、住友電気工業なども上位に名を連ねています。
全固体電池の世界市場は、立ち上がりに時間がかかるものの、2035年には約2兆7千億円規模にまで拡大する見通しです。日本が世界に先駆けて次世代電池の実用化に成功すれば、電池市場で再び優位性を取り戻せる可能性があります。
(2019年12月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)