産業医の役割を強化する働き方改革関連法が今春に施行されたことにより、産業医を再選任する企業が相次いでいます。ストレスチェック後の面接指導や職場巡視などの役割を果たせない「腰かけ産業医」が少なくないためです。産業医の紹介会社には、再選任の依頼が急増しています。アルバイト感覚で十分な知見がないまま、産業医をしている医師が多くみられます。
今年4月に施行した働き方改革関連法では、産業医への労働実態に関する情報提供の義務や、健康相談体制の整備などを求めています。企業はストレスチェックの結果が悪い社員から申し出があった場合、産業医など医師の面接を受けさせなければなりません。法改正を受けて企業が体制を見直すうえで、産業医に求める水準と実際の能力のギャップが浮き彫りになり始めています。
医師は、計50時間の研修を受けることなどで産業医の資格を得ることができます。厚生労働省によると、約10万人の医師が資格を保有していますが、実際に企業から選任を受けているのは3割程度です。実務経験が豊富で企業の要望に十分に応えられる産業医はそのうち1万人もいないとされています。
(2019年12月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)