兵庫県明石市が、大胆な発想でひとり親家庭の支援に乗り出しています。離婚家庭の多くが、養育費の不払いに直面していることから、市が養育費をいったん立て替えて、子どもを手放した親から徴収する制度を2021年にも設けることとしています。ひとり親家庭は増加傾向にあり、子どもの貧困率は一般家庭よりもかなり高くなっています。社会で支える仕組みが脆弱な現状に警鐘を鳴らしています。
建て替え後、市は不払いの親に相当額の支払いを求めます。支払う能力がありながら応じなければ、支払命令を出します。命令に従わず財産隠しなどの悪質性があれば、行政罰の過料を科し、最終的には子どもの同意を前提に、氏名などの公表も視野に入れています。このような明石市の取り組みは大変評価できます。明石から始め、国全体の制度化を期待したいという泉市長が強調する背景には、ひとり親家庭をめぐる深刻な現状があります。
夫婦が離婚するにあたり、民法は子どもが自立するまでの生活や教育などにかかる養育費について話し合い、分担を取り決めるよう規定しています。しかし、2016年度に全国で養育費を受け取っている母子家庭は、全体の4分の1に満たない状況です。ひとり親家庭の約半数が貧困状態にあり、非正規で働く母親が多いという統計もあり、経済的支援は大きな課題となっています。
(2019年12月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)