肥満は、体に必要以上の脂肪が蓄積された状態をいいます。大きく分けて、皮下脂肪型と内臓脂肪型の2つがあります。皮下脂肪型は、皮膚の下に脂肪が蓄積します。お腹やお尻などにある指でつまめるたるみが皮下脂肪です。女性に多く、膝や股関節などの障害や、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす要因となります。一方、腹筋内の内側、肝臓や腸の周囲にたまるのが内臓脂肪型です。服を着るとそれほど太って見えず、体重と身長の関係から肥満度を示すBMI (Body Mass Index)の数値も正常とされることが多く隠れ肥満とも呼ばれています。こちらは男性に多くみられます。
2つのタイプの肥満のうち様々な病気のリスクが高いのは内臓脂肪型です。内臓脂肪は、サイトカインという物質を作り、そのうち有害なタイプは、高血圧、高血糖、高脂質に結びつき、心筋梗塞、脳卒中などの発症リスクが高まります。内臓脂肪型肥満を簡単にチェックできるのが、健康診断で実施されるウエスト周囲径の計測です。男性で85㎝、女性で90㎝以上あると内臓脂肪型の可能性が高くなります。さらに血圧、血糖、脂質のうち2つ以上が基準値を超えていれば、メタボリックシンドロームと診断され、保健指導の対象となります。内臓脂肪型肥満は加齢によって起こります。人間の体は何もしなくても一定のエネルギーが消費され、この基礎代謝量は20歳をピークに加齢とともに低下していきます。また、年をとると運動量も少なくなりがちで、内臓脂肪が蓄積されやすくなります。
内臓脂肪はたまりやすいけれど減りやすく、皮下脂肪型肥満より食事や運動のダイエット効果が出やすいとされています。食事の指導ポイントは3つです。寝る前3時間以内に飲食をしない、ゆっくり食べる、野菜類を積極的に取ることです。食物繊維で腸内環境を整えることが内臓脂肪を有効に減らすことができます。運動については、日常生活の中で手軽に取り組める細切れ運動がお勧めです。例えばデスクワークで座りっぱなしの人は、30分に1度スクワットの要領で椅子に座ったまま5~10回立ち上がる運動が有効です。筋肉量の約60%は脚に集まっており、立ち上がるだけでも効率的にエネルギー消費ができます。
(2019年12月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)