体内に入った花粉は異物と見なされ、これを追い出そうとIgE抗体というたんぱく質が作られて免疫細胞にくっつき、次回の侵入に備えます。再び花粉が体内に入ると、免疫細胞上の抗体と花粉が結合し、免疫細胞からヒスタミンなどの化学物質が出て、目や鼻が刺激されます。これが花粉症の本体です。花粉症は、国民病とも呼ばれ、多くの人が悩まされる中、症状が重い人を対象にした新たな治療法が登場しています。
従来はぜんそくやじんましんの治療に使われていた抗体製剤ゾレアが、花粉症に使用されています。ゾレアは、抗体が免疫細胞に結合する前に先回りしてくっつき、アレルギー反応を止めます。ゾレアはアレルギー反応を抑える薬で、抗ヒスタミン薬などはくしゃみや鼻水を抑える薬です。どちらも症状は改善しますが、根治を目指すものではありません。ゾレアが使えるのは重症と最重症で、ステロイドや抗ヒスタミン薬を使っていても効果が不十分な人に限られます。
(2020年2月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)