NIPTは、生まれる前の胎児の状態を調べる出生前診断の一つです。血液検査だけで、妊婦さんに身体的なリスクを伴うことなく、胎児の染色体数の異常を推定できるのが特徴で、日本では、2013年4月に開始されました。現在普及しているのは、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーという3つの病気について調べる検査です。NIPTは、従来から行われてきた母体血清マーカーなどと比べると精度は高いものの、あくまでも病気の可能性を推定する検査で、陽性ではないものを陽性と判定する偽陽性が生じることがあります。
NIPTで陽性になった場合は、次に羊水検査を受ける必要があり、その結果が出るまでにはさらに時間がかかります。NIPTの実施時期は10~18週目くらいが目安です。NIPTを受ける前には、出世前カウンセリングでそういった偽陽性の可能性や、染色体異常の意味、産まない選択をした場合の人工妊娠中絶などについて十分理解したうえで、検査を受けるかどうか判断することが重要です。
日本産科婦人科学会では、倫理面に配慮して適切にNIPTが行われるように、指針を提示しています。指針には専門医の常勤やカウンセリングの体制整備といった実施施設の設置要件が定められており、それに基づき、日本医学会が実施施設を認定しています。2020年1月現在、認定施設として登録されている医療機関は全国92施設です。
NIPTに関しては、非認定施設での実施例の増加が問題になっていることから、厚生労働省が審議会を設置し、実態調査などを行っています。非認定施設では、検査結果が陽性でも郵送で通知されるだけだったり、確定診断のための羊水検査が受けられなかったりすることも多いので注意が必要です。認定施設では、NIPTの結果が陽性となった時には、産婦人科医と小児科医が連携して心理的サポートや診療を行います。
(Anetis 2019 Spring)
(吉村 やすのり)