ひとり親家庭の貧困は深刻です。2015年の国の調査によれば、大人が2人以上いる子育て世帯の貧困率は11%ですが、ひとりだと51%に跳ね上がります。ひとり親の9割近くは女性で、非正規で働くケースが多く、貧困に陥りやすい状況にあります。この貧困に養育費の不払いが追い打ちをかけます。厚生労働省の調査によれば、養育費を受け取っている母子世帯は24%に過ぎません。関わりたくない、支払い能力がないなどの理由が壁となり、支払いを取り決めた母は43%にとどまっています。
この養育費の不払いの泣き寝入りを防ごうと、全国に先駆けて動いたのが兵庫県明石市です。養育費などの取り決めの合意書や手引きを、2014年から離婚届と一緒に配っています。2018年度には、保証会社に業務委託して、養育費立て替えのモデル事業を開始しています。公正証書などで養育費を決めたのに受け取っていない家庭に対し、保証会社が立て替え相手から回収します。市は保証料を肩代わりします。しかし、こうした仕組みで救われるのは、公正証書などで養育費を決めた家庭だけです。現状では決めないで離婚した半数以上の家庭がこぼれ落ちてしまいます。
諸外国の法制度を研究するとともに、地方自治体の先駆的な取り組みの把握を通じて検討するとして、森まさ子法相が勉強会を開くなど関心が高まっています。子どもの立場尊重し、確実に支払いがされるよう、総合的な支援が必要となります。
(2020年2月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)