脳梗塞は毎年20万人程度が発症するとされています。動脈硬化や不整脈の一種の心房細動が主な原因です。血栓ができる場所や詰まる血管の太さにより、主に心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞に分かれます。50歳代以下では、卵円孔が原因とされる脳梗塞が目立ちます。心臓に達した血栓が、運動や咳、排便時のいきみなどの影響で、卵円孔を通って左心房に入ることがあります。その後、左心室から脳に移動し、血管を詰まらせると脳梗塞を引き起こす恐れがあります。
脳梗塞の再発予防は、抗凝固薬や抗血小板薬で血栓を溶かし、血液をさらさらにするのが一般的です。卵円孔は通常、治療の必要はありませんが、脳梗塞の原因と判断された場合、新たな治療法が有効な選択肢となります。右の太ももの付け根から静脈にカテーテルを入れ、金属製の器具を穴がある心臓に固定させます。器具は直径3㎜ほどのカテーテルに収まる大きさですが、心臓に到達すると傘のように開いて穴を塞ぐ仕組みです。
この治療には、2019年12月に公的医療保険が適用されました。高額療養費制度により、一般的な所得者の場合、自己負担は10万円前後で、入院期間も3泊4日程度で済みます。安全性、効果がともに高い治療法で、保険が使えるようになり、患者の選択肢が広がりました。原則、60歳未満の患者が対象になります。比較的若い時に脳梗塞になった患者の生活の質を高めることが期待されています。
(2020年2月23日 読売新聞)
(吉村 やすのり)