社会保障制度の改革
国が終身の受け取りを保障する公的年金ですが、受け取りをなるべく遅くするのがカギとなります。公的年金の受給開始時期は、個人が60歳~70歳の間で自由に選べます。早く受け取る繰り上げ受給をすると、年金月額は減ります。遅くする繰り下げだと増え、70歳からだと約4割増しになります。国はさらに75歳まで受給開始を待てるようにする方針です。
早めに減額された年金をもらい始めると、予想以上に長生きした時に後悔します。受け取りを遅らせて年金を増額すれば、早死にしても後悔するのはあの世に行ってからです。経済的な苦しさを味わうのは、少ない年金しかない繰り上げ受給で長生きした場合です。どの年齢からの受給を選んでも、65歳からの平均余命を生きた場合の受取総額が変わらないように、減額・増額率が決まっています。
公的年金が、長生きに伴う資産枯渇リスクに備える保険という考えに立てば、終身の保障を厚くする繰り下げ受給が安心感を高めるメリットとなりえます。働くという自助に、社会保障の公助をうまく組み合わせることが必要になります。
(2020年2月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)