発電量に占める原発の割合は、2018年度も約6%と7年ぶりの水準に回復しました。日本エネルギー経済研究所の試算では、2020年度に新たに再稼働する原発がない場合、テロ対策施設の遅れによる停止が響き、4%台に下がります。テロ対策施設は、特定重大事故等対処施設と呼び、原発がテロに遭っても遠隔で対応を担う施設です。2011年の東京電力福島第一原発事故の反省に基づく新規制基準で設置を義務付けています。
原発の活用が心もとないとなれば、国際社会が批判する火力発電への依存が強まります。福島事故前の2009年度に発電量に占める火力の割合は約60%でしたが、原発の一部が再稼働しても、現在8割を火力に頼っています。太陽光発電など再生可能エネルギーの割合は徐々に増えてきましたが、原発が停止した分をまだ補えていません。原発が1基止まると、火力発電に充てる燃料費が1カ月あたり数十億円増えてしまいます。
(2020年3月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)