テレワークは、リモートワーク、遠隔勤務などと呼ばれています。総務省などの定義によると、雇用型と自営型の大きく2つに分けられます。雇用型は、在宅勤務を指す内勤型、モバイルワークとも呼ばれる外勤型、サテライトオフィスやシェアオフィスなどを使う施設利用型に細分化されます。自営型は自宅で作業する例が多いとされますが、シェアオフィスなど家の外で働く人も近年は増えています。
総務省の調査によれば、日本企業のテレワーク導入率は、上昇傾向にあるとはいえ2019年で19.1%に過ぎません。米国企業の約8割、英国企業の約4割に比べ低率です。新型ウイルス禍を乗り越え、働き方改革の実現につなげられるか、各企業の取り組みが問われています。企業が在宅勤務をはじめテレワーク制度を導入するには、情報漏洩の防止策やコミュニケーション手段の確保、勤務管理などの整備が不可欠です。例えばパソコンは会社貸与なのか、個人所有を兼用で使うのか、ルール策定には煩雑さが伴います。
国土交通省の調査によれば、55.0%がプラス効果があったと答え、マイナス効果があったは5.4%と圧倒的な差がついています。プラス効果としては、自由時間が増えた、通勤・移動時間が減ったことのほか、業務効率が向上した、家族と過ごす時間が増えたなどが上位に挙がっています。災害発生や交通機関の遅延、子どもの発熱といった突発的な事態に対応できた、病気や怪我でも仕事ができた、育児や介護の時間が増えたとの声もあり、満足度は高くなっています。一方でマイナス効果としては、仕事(残業)時間が増えた、業務効率が低下した、社内のコミュニケーションが不足、出勤者に迷惑をかけたなどが挙がっています。職場にいないため、疎外感や孤独感に悩んだ人もいます。
場所や時間を問わない働き方は、テレワークに限りません。通信環境と情報端末は、オフィス内でもフリーアドレスやウェブ会議、ハドルミーティングといった働き方の選択肢を広げます。テレワークで培った知見は、オフィス内での効率改善、スマートワークの実現に役立ちます。国難ともいえる現在の状況も、意識と実態の両面で働き方改革を進める契機になり得ます。
(2020年3月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)