新型コロナウイルス感染症は、世界の感染者は累計で23万人を超え、死者も1万人に達するなど感染拡大が止まりません。高齢者の重症化防止や、水面下での感染者のクラスター形成の防止に向け、ウイルスが人に感染するメカニズムの解明が克服への焦点となっています。ウイルスの侵入時の結合の強さや体内での増殖しやすさなどに関与する研究成果が相次いでいます。新型コロナウイルス感染症の治療の難しさを克服する手がかりが見えてきています。
新型ウイルスの表面にある突起のたんぱく質が、人の細胞に侵入する時の入り口となるたんぱく質と結合する力が、SARSなどと比べて強いことが分かっています。人から人へのうつしやすさなどにかかわっている可能性があります。感染すると重症化する人が多いSARSに対し、新型コロナウイルス感染症は症状にばらつきが出ます。無症状の感染者や患者のウイルスから増殖に必要な遺伝子の一部がSARSと異なることが突き止められています。人によって微妙に異なる可能性もあり、どのような人が重症化し、軽症にとどまるのかを突き止める手掛かりになるかもしれません。ウイルスの細胞への侵入経路は、新型コロナとSARSは共に、ACE2(アンジオテンシン変換酵素)を利用しています。
WHOがパンデミックを宣言した新型コロナウイルの感染拡大や流行は、長期化するとの見方が強くなっています。謎が多いウイルスの正体解明は、治療薬開発の短縮化やワクチン開発まで網羅的な支援につながります。
(2020年3月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)