日英の受診方法の差異

イギリスの医療制度は、元来患者が医療機関へ行くのを厳しく制限しています。英国に住む人は、移民を含めて地元の家庭医(GP)に登録し、体調を崩した時は電話やネットで予約を取って診てもらいます。多くはGP診療所で治療が完結しますが、GPの手に負えない手術などが必要と診断されれば、専門医がいるNHS病院と呼ばれる国営医療傘下の王立自由病院につながれます。風邪くらいではGPにも診てもらえません。そのため、医師へのアクセスの悪さに不満を抱く患者は少なくありません。
一方、日本の医療制度はこの対極にあります。健康保険証があれば、患者はどの診療所・病院にかかろうと原則自由です。しかし、コロナ禍が患者行動を変えてしまっています。厚生労働省は、風邪の症状が出た人には仕事や学校を休んで家にいるよう求めています。ただし一定以上の熱が続き、強い息苦しさがある場合などは相談センターに申し出る、これが基本となっています。
世界の中で相対的にコロナ感染者が少ない日本は、今のところ総じて医療サービスが機能しています。しかし、この先は、欧米に遅れて感染爆発が現実化する恐れを念頭におくべきです。無症状や軽症の人は、自然治癒力も生かして施設で療養し、専門医と設備が整った感染症病室は重篤者に割りあてることが大切です。他の診療科の診察をおろそかにしないためにも、重篤者に医療資源を集中する機能分化が必要となります。

(2020年3月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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