企業が働き方の多様化や高齢化に合わせて、退職給付制度の改革に乗り出しています。公的年金では、受給開始の年齢が引き上げられており、補完する企業年金の役割は高まってきています。企業年金の大きなテーマとなっている定年延長を実施・検討する企業は、75%にのぼっています。人手不足が深刻になるなか、制度の魅力を高めて人材の確保を狙っています。
高齢化への備えも本格化してきています。政府の要請や高齢化の進展に伴って、定年を延長した企業は14%に過ぎませんが、延長の検討に入った企業と合わせると75%に達しています。現時点で非正規社員を対象にした退職給付制度を持っていない企業も、導入に向けた準備を始めています。契約社員だけでなく、パートも対象にしようと考える企業も多くなっています。シニア人材を確保するため、60歳の定年を昨年、65歳にすることにより、確定拠出年金(DC)の加入期間は、新しい定年まで延ばして積立額を増やします。企業の負担は増えますが、社員が継続して働くインセンティブにするのが狙いです。
政府は、年金制度の改革法案を閣議決定しました。公的年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げられることなどが柱です。これまでは企業が負担を減らすための制度の見直しが中心でしたが、企業も退職給付制度について抜本的な見直しが必要となります。
(2020年3月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)