わが国では、ひとり親世帯の貧困率が他国と比べて圧倒的に高くなっています。ひとり親家庭では2人に1人が貧困にあえいでいます。7割以上の子どもが養育費をもらえていません。養育費は、離婚後に子どもを引き取った親が別れた相手から受け取るお金です。民法766条1項には、養育費を離婚時に決める規定があります。母子寡婦福祉法では、離婚相手が養育費を支払う責務が明記されています。
厚生労働省の調査によれば、養育費を受け取る割合は、母子家庭で24%に過ぎません。2018年度の調査では、夫婦で子どもを育てる世帯の平均所得が774万円なのに対し、母子世帯の所得は282万円と低くなっています。受け取るべき養育費をもらえなければ、母子世帯の生活は困窮します。OECDによれば、日本は先進国でひとり親世帯の貧困率が最悪水準です。
ひとり親世帯の貧困率が先進国で最悪水準にあたる現状は、当事者任せが限界であることを示しています。子どもの可能性が家庭環境で閉ざされないよう、政府が積極的な対策を打ち出す必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大で経済的な影響が広がり、ひとり親世帯は一段と厳しい環境におかれています。
(2020年4月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)