メンバーシップ型とジョブ型

日本の正社員は、終身雇用と年功序列を前提に職務や勤務地を限定せずに働くメンバーシップ型が一般的です。皆が同じムラ社会に帰属し教育するのも企業なので、初任給も平等であるべきだという考えです。メンバーシップ型雇用では、企業による解雇を厳しく制限する判例法理が確立しています。
一方、欧米型のジョブ型では、能力で個別に新人の給与を決めています。人事部ではなく配属先の幹部が採用面接の時点で給与を決める裁量を持つのが一般的です。報酬は自らのスキル、実績をアピールして勝ち取るものだとの考え方が一般的です。高い報酬を払い配置転換も命令もできない代わりに、職務を全うしていないと判断すれば解雇事由となりえます。
解雇なしが原則のメンバーシップ型は、突然の解雇リスクがない分、給与水準は解雇ありのジョブ型よりも低くなります。初任給を含む賃金で日本が見劣りする一因も、終身雇用を保証しているからです。しかし、薄給のままで、日本企業は高度人材を獲得できるのかが改めて問題となっています。給料が一律でないのは、中途採用では当たり前の世界です。ある意味での格差は、今後の日本の経済を支えていくうえで必要となってきます。初任給の金額を柔軟にするということは、一括作用のやり方にメスを入れることにもなります。企業が古い横並びの処遇制度を積極的に変えていく転機となると期待されています。
新型コロナウイルスの感染拡大が雇用を脅かし、これまでの日本的な正社員を再評価する動きが出てきます。リモートワークなどで正社員の働き方も変わると思われますが、これまで以上に正社員一人ひとりに成果が求められることになります。

(吉村 やすのり)

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