新たな飛躍を
クライエントが希望し、医療者が施術を提供できれば医療行為は成立するが、生殖医療において忘れてはならないことは、他の医療とまったく異なり、新しい生命の誕生があることである。たとえ自己決定に基づく生殖医療であっても、生まれてくる子どもの同意を得ることはできないことを、まずもってクライエントも医療提供者も十分に認識しておく必要がある。一方、周産期医療は産婦人科診療の基本であると同時に、母児という複数の生命を取り扱い、かつ母児ともに無事に分娩を終了させることを義務付けられているといった他にみられない特殊性を有している。妊娠はさまざまな血管疾患に対する負荷試験でもあり、プレコンセプションケアが周産期予後の改善のみならず、将来の生活習慣病の予防につながり、その重要性も指摘されるようになってきている。
今こそ生殖医療および周産期医療に携わる者が、さらなる相互理解を深め、生まれてくる子どもの長期予後を含めた安全性の確保ならびに母子の生涯にわたるヘルスケアに努めるべきである。
(生殖医療と周産期のリエゾン 診断と治療社)
(吉村 やすのり)