労働政策研究・研修機構の資料によれば、フランスのパートタイム労働者の賃金水準はフルタイム労働者の86.6%です。オランダ、ドイツ、英国も7割を超えるのに対し、日本は60.4%にとどまっています。欧州連合(EU)では、パートタイムは客観的な証拠で正当化されない限り、フルタイムより不利な扱いを受けないと定めています。
日本でも、2008年施行の改正パートタイム労働法により、雇用期間に定めがないなどの条件付きではありますが、パートの待遇改善が図られています。また、有期契約が通算5年を超えると無期転換を要求できるようになり、雇用の安定などで一定の進展はありました。しかし、賃金水準の格差は依然として大きいのが実情です。
日本の正社員は、能力で賃金が決まる職能給であり、能力は経験を重ねることで上がるという年功序列を前提として設計されています。非正規は経験不問の単純労働を想定した職務給が多くなっています。こうした賃金制度のズレが存在する限り、待遇差の抜本的な解消は難しいと思われます。
(2020年5月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)