少子化社会対策大綱案

今後5年間の少子化施策の指針となる政府の少子化社会対策大綱が、近く閣議決定されます。希望する時期に希望する数の子どもが持てるように、経済的支援や男性の育児支援に重点を置いたのが特徴です。案では、希望通りに子どもを持てた場合の出生率(希望出生率)1.8の実現に向け、若い世代が将来に展望を描ける環境を作るとしています。
経済的支援として、多子世帯への児童手当や、育児休業を取得している人に支払われる給付金の拡充を目指します。児童手当は現在、中学卒業までの子ども1人につき、原則月1万~1.5万円が支給されますが、第2子や第3子になるほど増額したいとしています。育児休業は子どもが原則1歳になるまでの間、雇われて働いている親が取得でき、休業中は雇用保険から休業前賃金の67%が支給されます。
男性の育児支援については、配偶者の出産直後に休みを取りやすくする新たな枠組みを検討します。今でも男性が出産後8週間以内に休業した場合、2度目の育児休業を取れる仕組みがあります。産後うつのリスクが懸念される出産後間もない時期に父親がもっと育児に関われるよう、その間の給付率の引き上げや手続きを簡素化します。
このほか、AIを使った結婚支援や、未婚率が高い非正規労働者の処遇の改善なども掲げています。課題は財源です。経済的支援の拡充には最大数兆円規模の財源が必要とみられますが、想定外のコロナ禍で財源確保は厳しさを増しています。しかし、少子化が社会や経済、労働市場などに与える影響は大きく、対策は待ったなしのわが国最大の喫緊の課題であることを忘れてはなりません。

(2020年5月23日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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