緊急事態宣言が全面解除となり、新しい生活様式が始まります。府、自治体、医療機関とも、この間の対応から教訓をくみとり、第2波、第3波に備えねばなりません。諸外国のロックダウンと異なり、日本の外出や営業の自粛要請に罰則を伴う強制力はない状況にもかかわらず、国民一人ひとりの自発的な協力に負うこのやり方で、これまでわが国は感染爆発を避けることができてきています。確認された死者も約800人と、数万人の欧米各国に比べ極端に少数であったことも、海外からも一定の評価を受けています。
コロナ禍にあっては、世界中で医療崩壊が大きな問題となりました。再流行に備え、まず急ぐべきは、感染の疑いがあれば速やかに診察や検査を受けられる態勢を整えることです。秋以降は、症状が似ているインフルエンザの流行も想定されています。より多くの患者に迅速に対処しなければならないことからも、院内感染や高齢者施設での集団感染を効果的に防ぐ方策も検討が必要となります。
長年続いてきた国の医療費削減策により、感染症病床を始めとして一般病床を減少させるよう強いられてきました。今回のコロナ禍により、病床数を効率の観点のみから削減するのではなく、非常事態が起こった場合の安全策として、余裕をもって保有しておかないといけないということが理解できたのではないでしょうか。これまで国の一般病床の削減政策が十分でなかったことが幸いし、諸外国のような医療崩壊が起こりませんでした。
ポストコロナの医療における最大の関心事は病院経営問題です。患者が受診を控え、医療機関も院内感染防止の観点から診療を縮小しています。ひとたび院内感染が発生したら、最低2週間は全ての新規患者の診察が休止となってしまいます。収益を自費診療である健診部門の収入で補填している病院もみられますが、大病院では不要不急の健診を休止せざるを得なくなってきており、収益悪化が加速しています。コロナ対応によって、コロナ以外の受診患者の減少は3割にも及んでいます。もともと60%以上の病院は赤字経営であり、黒字の病院でも1~2%の利益率しかありません。ほとんどの病院の人件費率は50%以上にのぼっていますが、日々感染リスクと直面している医療従事者への給与のカットはできません。当然利益は大幅に下がり、ほとんどの病院の経営が成り立たなくなってきています。
緊急事態宣言後、各都道府県は緊急事態措置を出し、休業した企業に協力金という名目で補償金を給付しています。コロナ対策に追われた病院ほど、経営は厳しい状況にあります。病院に対しても中小企業と同様な支援金が必要と思われます。コロナ後には、多くの民間病院が倒産危機に陥ると思われます。医療機関の減少は、第2波、第3波が起こった場合、今度こそ諸外国でみられたような医療崩壊につながってしまいます。政府や自治体においては、病院に対する経済的支援策を直ちに推し進めて頂くことが大切です。
(吉村 やすのり)