コロナウイルスは、エンベロープという脂質の二重膜で覆われています。この膜は熱や湿度に弱く、膜が壊れると感染性を失います。そのため新型コロナも気温が高く、湿度が高くなるほど感染力が弱まる可能性があります。空気が乾燥していると、口から出た飛沫の水分が蒸発し、軽くなるため長時間浮遊します。逆に湿度が高いと、水分が奪われにくいため飛沫は重く落下しやすくなります。太陽の紫外線は、ウイルスのRNAを傷つけるため、働きを弱める効果があるとも言われています。
新型コロナウイルスの感染拡大と気候との関係については、世界中の科学者が研究を進めています。正確な関係はまだ定かではありませんが、高い気温や湿度といった環境がウイルスに与える影響は大きくないだろうという見方が一般的です。WHOも、太陽の日差しや25度を超える気温でも新型コロナ感染症は防げず、高温多湿の地域を含むどんな気候でも、感染が広がる可能性があるとしています。感染拡大防止策として、暖かい気候に頼るのは時期尚早かもしれません。
(2020年6月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)