治験薬の有効性に関するエビデンス

治験薬の有効性については、科学的な根拠(エビデンス)が必要になります。薬を服用した→病気が治った→薬が効いたと考えるのは、雨乞いをした→雨が降った→雨乞いが効いたと同じ論理であり、「3た論法」と呼ばれます。この3た論法には、科学的根拠がありません。

薬の有効性を実証するためには、A薬を投与する群と、投与しない対照群とに患者を無作為に振り分けて比べるランダム化比較試験を行う必要があります。その結果、治療効果に統計学的に意味のある差が出て初めて、科学的根拠があると言えます。新型コロナウイルスの治療薬としては、新型インフルエンザ治療薬であるファビピラビル(商品名アビガン)で複数の臨床研究が進行中ですが、まだ有効性は実証されていません。
抗ウイルス薬レムデシビルは、米国や日本など10か国の約1,000人を対象に実施されたランダム化比較試験では、偽薬を投与した対照群と比べて、回復期間が有意に短縮されています。しかし、中国で行われたランダム化比較試験では、症状が改善するまでの時間や死亡率などに有意差が見られませんでした。
このように、個別の研究によって結果が異なるケースが多くみられます。いずれは、複数の研究論文を体系的にまとめる系統的レビューや、統合して解析するメタ解析を通して、科学的根拠の信頼度を高めることが必要になります。

(2020年6月11日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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