日本経済新聞は、新型コロナウイルスの感染が拡大していた4月の超過死亡を特定警戒地域であった13都道府県で調査しています。それによれば11都府県で平年より死亡数が大きく上回っています。東京都の4月の死亡数は1万107人で、平年より1,056人(11.7%)増加しています。東京都を含め埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡の計7都府県は、平年より1割以上増えていました。
住民基本台帳に基づく死亡数は、肺炎以外の全ての死亡を含んでいます。このため持病の悪化が死因と医師が判断してPCR検査を受けなかったケースのほか、病院が新型コロナの患者を受け入れるため病床を減らし、入院治療を受けずに死亡したケースなども含まれています。医師が感染に気づかなかった見逃し事例があることも否定できませんが、感染対策で入院を制限するなどした間接的な影響の可能性もあります。このデータから、コロナ禍での死亡数が多くなっていると結論づけることは早計です。
欧米では全死亡数を迅速に公開しています。データに基づき、行政当局や海外メディアが、新型コロナの流行中の死亡数は、平年より5~6割多いなどと分析しています。わが国においても、政府は、手書きの死亡届を電子化する作業が遅れており、死因を1つに絞る作業にも手間を要しています。政府は、4月以降の超過死亡の発生状況を迅速に把握する新システムを早急に導入することにしています。
(2020年6月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)