今後のコロナ対策

日本は、PCRなどの検査能力や検査数の小ささが際立っています。1日当たりのPCR検査では日本が最大2万件台であるのに対し、米国40万件、ドイツ15万件です。他国に比べて明らかに少ないことが、市中感染を見逃しているのではという強い疑念を国民に抱かせています。消費などの経済活動を萎縮させています。しかし、これまでのところPCR検査数の多寡と、コロナ感染による死亡者数との間には関連が認められていません。
日本の感染症専門家は、新型コロナの感染特性から、ランダムな検査よりも、クラスター対策の方が有効だと主張しています。新型コロナの感染伝播は、3密などの条件がそろった時に、一部の人が次のクラスターを生む形で進みます。全ての感染者が、同等に感染拡大を引き起こすインフルエンザとは異なっています。このような特性を持っているウイルスに対しては、クラスターを発見し、接触者調査によって3密になった場などを見つける方が効果的です。8割の感染者は人にうつさずにウイルスが消えてしまうため、ランダムな検査で彼らを見つけても感染拡大の防止にあまり役に立ちません。こうした新しい知見は、世界の感染症学界で高く評価されることが期待されます。
日本国内に市中感染が一定程度は広がっていること、今後、海外からの入国者を増やさざるを得ないことなどを考え合わせると、いち早くクラスターの芽を見つけるためには、少しでも症状がある人は医師の判断を得て、すぐPCRや抗原検査などを受けられる体制づくりは重要です。また冬のインフルエンザ流行期には、インフルエンザとコロナは症状で区別できないので、疑いのある患者は全てPCRなどの感染検査を受けることにしないと、医療現場が著しく混乱する恐れが出てきます。医療現場の混乱を防ぐためにも、医師の判断で即座に検査ができる体制を構築すべきです。
緊急事態宣言を出した背景には、医療崩壊の懸念がありました。しかし、当時の東京都の入院者数データに誤りがあったとの報道もあります。実際にどこまで医療が逼迫していたかを検証することも大切です。感染者の重症化・死亡リスクを正確に把握する必要もあります。死者数の集計だけではなく、年齢や基礎疾患別の分析により、どのグループがハイリスクなのかを示すべきです。この情報は、行動規制を設計するのに重要です。

(2020年6月17日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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