これまで日本では60歳定年が主流でした。20歳前後で社会に出て、約40年働き、勤務先を定年退職しても人生はまだ40年続くことになります。60歳定年が定着した1980年の日本人の平均寿命は、男性73.4歳、女性78.8歳でした。しかし、寿命は伸び、老後の概念が変わってきています。2060年には、男性84.2歳、女性90.9歳になるとされています。
60歳以上の就業者は増え続けています。国は70歳現役社会の実現に向けて動き出しています。6月の国会で、高齢者雇用安定法などが改正されました。70歳まで就業機会を確保することが企業の努力義務になります。現在、65歳まで社員を雇い続ける義務が企業に課せられています。そこにプラス5歳、定年を延長したり、再就職先を紹介したり、独立起業を支援したりするなどの取り組みを求めています。日本は、世界トップの高齢社会であり、医療費や年金など高齢者向けの社会保障給付額が年々増加し、社会保障財政が厳しくなっています。働けるのであればしっかり稼いで社会保障費を払う側になってほしいとの考えにより、今回の法制度改定につながりました。
しかし、人生100年時代に働き続けるのは簡単ではありません。今ある仕事のうちおよそ半数は、2030年までに技術革新によって失われると予測されています。しかも、今回のコロナ感染拡大で雇用状況は激変し、先行きが読めなくなってきています。人員余剰感は高まっており、企業はシニア雇用に消極的になるという見方が強くなっています。AIや機械が苦手とする創造的な業務に就くことが解決策の一つです。10年後、20年後には今の仕事はないかもしれません。常に先を予見し、働くスキルを磨き続けることが大切です。
(2020年6月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)